100年前、女性たちが掲げたプロテストの手芸

以前、イギリスの女性参政権のデモ行進で掲げられたバナーを刺繍で作ったグラスゴーのアーティスト、Ann Macbeth(アン・マクベス)のことを書いたことがあるのですが、そのバナーをその時は見つけることができなくて気になったままにしていたら、偶然発見しました。運命か。

投獄された女性たちの名前を刺繍に刻んだプロテストのバナー

image via London Museum

「WSPU Holloway Prisoners banner」と名付けられたこちらのバナーは80枚のリネンを繋ぎ合わせて、真ん中には女性参政権運動で投獄されてハンスト抗議を行なった80人の署名が刺繍されています。1910年6月に行われた「Prisoners Pageant」というデモ行進で掲げられ、投獄された女性たちの勇気を讃えるシンボルとなったそうです。

WSPUはWomen’s Social and Political Union(女性社会政治同盟)の略で、かの有名なエメリン・パンクハーストとクリスタベル・パンクハースト率いるイギリスの女性参政権運動の中心的組織のことで、Holloway Prison(ホロウェイ刑務所)に多くの女性活動家たちが投獄されたことがバナーの名前の由来となっています。

当時の女性参政権運動の様子を写真で見ることができます

image via Maharam

当時のデモ行進の風景とか気になるー、と調べたら見つけたのがこちら。Christina Broomが撮った当時の女性参政権運動の写真の数々が残されていました。デモといわれて現在の私なんかが想像するイメージ(ダンボールとかのプラカード)とまったく違って、ドレスを着て手芸のバナーが並んでいる様子は新鮮かつ素敵に見えます。

あと下段の写真で一人の女性が持っている格子のオブジェみたいなものはなんだろう? と思ったら、

image via London Museum

エメリン・パンクハーストの娘で同じく活動家のシルヴィア・パンクハースト(写真でこのブローチを持っている人)がデザインしたもので、落とし格子(お城や監獄などの門)の真ん中に、当時囚人服につけられていたというブロードアローのマークをWSPUのシンボルカラーである紫、白、緑色にして、投獄された女性たちにその闘志を讃えて贈ったとされるブローチでした。

そのほかにも手芸魂をくすぐる参政権運動の小道具たちがこちら(画像下)。

首相襲撃事件で有名なサフラジェットのVera Wentworth
WSPUのハマースミス支部のバナー。「Deeds Not Words(言葉ではなく行動を)」

手作りの手芸のバナーは現在にも引き継がれています

image via Digital Drama

これらはイギリスで女性参政権が認められた1918年から100周年の2018年、国際女性デーに「100 Banners」という、当時のデモ運動からインスパイアされた手作りのバナー100本を持ってパレードした企画の作品です。

最近の日本のデモも洗練されてきて、かっちょいいデザインのプラカードなんかも見るようになりましたが、こうした手芸のプロテストも悪くないんじゃないかなぁ。むしろいいんじゃないかなぁ、などと思いました。

こうした先人たちのおかげで選挙権は万人のものとなりました。近いうちの選挙、男だ女だ、そのほか何者であろうと他人から押し付けられることのない社会に一票入れたいです。

ちなみに、Suffragettes(サフラジェット)と呼ばれるこのWSPUの抗議活動は投石や放火など暴力的なもので、過激というレッテルを貼られるものでもありましたが、それには理由があって、カラフルで目をひく手芸のバナーも白いドレスも新聞の誌面写りを考えて注目を集めるためであったとか、暴力的な抗議も同じ理由で、平和的な訴えだけではまったく耳をかさなかった社会に衝撃を与えるためだったとか、当時の女性たちの闘いの歴史にリスペクトは忘れておりません。浮ついた感じで手芸のバナー可愛いー! と最初飛びついた自分を猛省。

ニュースサイトVoxのYou Tube動画「The most notorious act of protest for women’s suffrage(女性参政権のための最も悪名高き抗議アクト)」で、サフラジェットのプロテストの歴史が簡単にわかります(英語のみですが自動翻訳でも)。あとは映画「未来を花束にして」も入門編としていいかもしれません。

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