スコットランド「グラスゴー・ガールズ」の一人、ジェシー・ニューベリーの社会を変える刺繍

一度は憧れて挑戦してみるものの、途中で根気が続かず投げ出してしまうもの、それが私の場合は刺繍だったりするもんで、刺繍アーティストの方々にはいつも感動するばかりです。そしてこの度も目が眩むばかりの素晴らしい刺繍に出会ってしまいました。

刺繍を初めて芸術学校で教えたジェシー・ニューベリー

19世紀末にスコットランドのGlasgow School of Art(グラスゴー美術学校)に刺繍科を初めて創設し、そこで教鞭をとっていたJessie Newbery(ジェシー・ニューベリー)です。

image via V&A Museum
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首周りに巻くカラーとベルトのセット image via V&A Museum

1864年にスコットランドでショール製造業の家の娘として生まれ、エナメル技術やモザイクタイル、刺繍などを学んだ後に、1894年にグラスゴー美術学校に初めて作られた刺繍学科で教師として刺繍を教えるようになります。既存のパターンを刺繍するこれまでのやり方を捨てて、自分のオリジナルのデザインで、シンプルで簡単なステッチを使うことを生徒に推奨して、刺繍を誰もができるものに変えていったそうです。

さらに、これまで美術学校に真面目に取り上げられてこなかった刺繍を芸術として地位を上げると同時に、アートを学ぶ女性の増加にも貢献したとか、私が何回生まれ変わっても追いつけないような功績を残している方だとも知り震えています。

グラスゴーの女性アーティストたちで作るグループ、The Glasgow Girls(グラスゴー・ガールズ)の一員でもあり、建築家のチャールズ・マッキントッシュらのアート・グループ、The Four(ザ・フォー)と共に、建築やインテリアデザイン、絵画などの装飾美術の世界で、Glasgow Style(英国版のアール・ヌーボーで、アーツ&クラフト運動の進化系でもある)と呼ばれる歴史的にも重要な流れのひとつを作っていった方です。

彼女自身の作品は、淡い紫、緑、青、ピンクを好んで、植物をモチーフにすることが多く、なかでもバラをよく使っています。実際に今売っていたら「あ、全部下さい!」と即答しちゃうくらい(お金のことはさておき)、瞬で惚れ込みました。

ニューベリーの生徒、アン・マクベスが引き継ぐアートとしての刺繍

シルクの刺繍カラー image via invaluable
自作のカラーを着たアン・マクベス 1900年
Open, lugged ginger jar image via The Glasgow School of Art
Large plate image via The Glasgow School of Art

グラスゴー美術学校でジェシー・ニューベリーの生徒の一人であったAnn Macbeth(アン・マクベス)は、1902年以降ニューベリーの後を継いで教師となり、花や植物など自然をモチーフにした刺繍作品や陶芸などで高く評価された人です。

彼女もニューベリーと同じく、個々人の想像力に重点を置いた教育を大切にしていたようで、刺繍は単なる家庭科の一科目ではなく、アートの表現なんだという、今なら当たり前に思う感覚を確立していった偉大な女性たちだったのでした。

さらにお二人とも女性の社会進出に熱心な立場で、女性参政権運動にも積極的に参加していて、デモ行進などの際に掲げるバナーを刺繍で(!)作っていたんだそうです。ラディカルな刺繍。素敵。

アン・マクベスは参政権運動で投獄までされたという記事も見かけました。足を向けて寝られません(方角わかりませんが)。

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