ネコ好きを超えたネコ狂の芸術家と文豪に会いに行ける

猫の彫像のポストカード

おでかけに最適な季節がもうすぐやってくると信じて(信じたい)、ネコ好きの方にお届けしたい、おすすめネコスポット2ヶ所。ネコ好きな人はどちらかというとインドア志向かもしれませんが、ネコというマジックワードでどんな極地にでも這って辿り着く潜在能力があるはず。個人的には「遠いな…」と普段ならちょっと躊躇する場所でも、ネコのためならとその足取りは軽くなります。

台東区谷中の彫刻家、朝倉文夫の朝倉彫塑館

まずは台東区谷中にある彫刻家、朝倉文夫のアトリエ兼住居だった建物が国の有形文化財に登録された、朝倉彫塑館。たまたまネットで目にした黒猫の彫刻に目を奪われて、それが朝倉文夫の作品と知り、興味が出てたどり着いた場所です。そういうわけで、明治から昭和にかけて活躍し、東洋のロダンとまで呼ばれるほど日本の近代彫刻を代表する有名な彫刻家だとは、つい最近まで知らずお恥ずかしい限り。

まずは、どでかい洋館のアトリエに並ぶ作品を見ることができて、そこから先へ進むと急に伝統的な日本家屋につながり、さらに建物が周りをぐるりと囲むこれまた伝統的な日本庭園が中庭として広がっていて「あら素敵」という感想を遥かに超える、映画のなかにでも入り込んだかのような、クラクラするような空間体験に卒倒。書斎や茶室や居間などがすべて中庭を臨む作りになっていて、どの部屋からも美しい庭園を眺めることができ、この庭を朝倉文夫は、生き方に迷いが生じるとこの庭を見つめ自己反省の場になるようにと設計したとパンフに書かれていて、そういえば見学していると、寝室にあたる和室で、数名のおばさまたちがめちゃくちゃくつろいで座って談笑していて「気にしないで見ていってね」と言われたんですが、あのおばさまたちも中庭を見て人生の迷いが消えたんだなぁと、絶大な効果を感じました。

日本庭園を望む日本家屋の茶室の室内風景
茶室から眺める中庭の風景。落ち着く〜
屋上庭園と座っている男の銅像
屋上菜園と街を見下ろす彫刻がなかなかの絶景でした

モダンな洋のアトリエと、伝統的な和の家屋が融合された文化遺産も納得の建物をゆっくり巡ることができるのも素晴らしい経験だったのですが、やはり私の目当てはネコの彫刻。ネコの彫刻だけの部屋がしっかりと用意されております。愛猫家だった朝倉文夫はネコをモチーフにした作品を数多く生み出していて、代表作である「たま(好日)」ほか2体が並んだネコ部屋でニヤニヤしながら写真撮りまくったのは私です。冷たい石の彫刻ではなく、今にも動き出しそうで思わず触りたくなるようなしなやかな肉体を感じる本物の作品に見惚れました。

多いときには19匹の猫を飼っていたそうで、猫と朝倉文夫のいちゃいちゃ写真はほかにもたくさんあります
ねこのたまの彫像
こちらがたま(好日)
たまの彫像の写真のポストカード
お土産にポストカードを
上を見上げている猫の彫像
image via Chiko Plus

50体以上のネコの作品があるそうで、ネコ部屋の展示もその都度変わるようで、私が行ったときと違う作品が紹介されている、モデルの黒田知永子さんが朝倉彫塑館を訪ねたときのブログの記事は、もっとちゃんとしてるので一読どうぞ。

横浜にある作家、大佛次郎の大佛次郎記念館

お次は、横浜の港の見える丘公園にある、作家、大佛次郎(おさらぎじろう)の所蔵書籍や仕事部屋などを展示した大佛次郎記念館。港のみえる丘公園を登ってイングリッシュローズガーデンを抜けて突然出てくるレンガ造りの大きな建物で、大佛次郎の作品の歩みや資料、自筆原稿、生前に集めていた膨大な書籍や仕事部屋を再現したものなど、本好きなら大興奮するでしょうが、やはり目当てはネコ。展示部屋には必ずネコの置物があって、ネコ好きも大興奮。「あ、ここにネコ、あそこにもネコ!」とネコ探しするのも楽しいくらい、あっちこっちにいました。素晴らしい。

ハードカバー本と黒猫のブックスタンド
代表作「天皇の世紀」のディスプレイもしっかり黒猫のブックスタンド
たくさんの猫の置物に囲まれたデスクとベッド
仕事部屋兼寝室にも無数のネコの置物が飾ってあります
寝そべっている黒猫と、一列に並んだ猫の餌を見ている老人のポストカード
お土産はもちろんネコのポストカード。大佛次郎自らが撮影した黒猫オ茶サンの写真(右)

大佛次郎も常時10匹程度のネコを飼っていて、生涯で500匹以上のネコと暮らしたという大大大愛猫家。さらに、ネコ好き必携の名著「猫のいる日々」(徳間文庫)を書いていて、生まれ変わるならネコになりたい、と言ったほどのネコ愛が溢れ出ています。彼もネコといちゃいちゃしている写真が数多く残っていて、朝倉文夫もそうだけど、お二人ともネコと一緒の写真のお顔の優しさで崩れた笑顔がとてもいい!

そういえば二人とも、生のネコはむろん物のネコも身の回りにたくさん置いていて、常にネコを近くに求める強欲さに笑顔がこぼれます。さっきまでそこにいたはずのネコがいなくなっていたり、突然後ろに現れたり、ネコの存在の不確かさを、同じくネコ好きの作家、アーシュラ・K・ル=グウィンは「ネコのタイムマシーン」と表現していたことを思い出しました。常にネコにそばにいて欲しいと願う人間をよそにふらりふらりと好きに生きるネコ、喪失を埋めるためにネコの置物を作ったり置いたりするのも人間、人間ばっかり哀しい。

最後に、どちらの場所も朝倉彫塑館は500円、大佛次郎記念館は200円と、破格の安さの入館料ですので、ぜひネコ好きのみなさんは駆けつけてください。

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