映えじゃなくて記録としての人々の写真を撮った2人の写真家

刺繍をしながら座っている若い女性2人の写真

今や誰でもスマホさえあれば簡単に写真が撮れるので、写真を撮ることが日常化している人のほうが多いと思うのですが、撮るといってもネコとか景色とか食べ物の写真ばかりになりがち。セルフィーはともかく、人物を撮るとなると、これはまた別物で才能が必要なんじゃないかと思ってしまったのは、最近出会ったどちらも女性の写真家の作品を見ちゃったから。

片隅の人々を撮ったアメリカ人写真家、ドリス・ウルマン

image via ICP

1882年生まれのアメリカ人写真家、Doris Ulmann(ドリス・ウルマン)の作品で、NYに生まれ大学で写真を学んだ後、ポートレート写真専門のスタジオで働き始めるのですが、次第に彼女の関心は田舎に住む人々の暮らしや伝統を資料として残すことに変わり、アパラチア山脈に住む貧しい白人や南部の黒人たちの写真を1927年から1932年にかけて撮り始め、現代でも貴重な歴史的資料として評価が高い作品なんだそうです。

「I am of course glad to have people interested in my pictures…but my great wish is that these human records shall serve some social purpose(私の写真に興味を持ってもらえることはもちろん嬉しいことですが、私の本当の願いはこれらの人々の記録がなにか社会的な目的の役に立つことです)」と本人が語っていて、おそらく当時はほとんど注目もされず無視されてきたであろう、社会の片隅に生きる人々を写真というアートで記録に残すことの重要性をはっきり意識していたドリス・ウルマンに感服です!

私だったら写真撮りますよ〜なんていわれてカメラ向けられたら、ぎこちない笑顔作ってしまいそうになるけど、彼女の写真に写る人々はニコリともしてなくて、しかしその人が生きたであろう、決して楽ではない人生が垣間見えるようなポートレートになっていてスゴイ。

スタジオ54のセレブを撮ったMaripol

Maripol本人とマドンナ image via Vintage Everyday
プラスチックス
デボラ・ハリー
ジャン=ミシェル・バスキア
シャーデー
クラウス・ノミ
グレース・ジョーンズ image via Maripol

雰囲気変わりまして、こちらはモロッコ生まれフランス育ちのアーティストMaripolの作品で、1976年、20歳のときにNYにやってきてフィオルッチのデザイナーとして働き始め、当時オープンしたばかりのスタジオ54でアンディ・ウォーホルらのポラロイド写真を撮っているうちにジャン=ミシェル・バスキアと仲良しになって、NYのアンダーグランドシーンの人々の写真を今でも撮り続けている人です。

こちらは一転華やかで時代の高揚した雰囲気とか写っている有名人たちのカリスマパワーがすごい。ポラロイド写真の一発勝負感は、その瞬間を撮るという意味で、スタジオ54という超イケてる人たちの刹那的な輝きをバッチリ捉えていて、これまた80年代の記録にもなっているという。

ここでフト思い出したのが(ちょっと脱線しますけど)Google Earthのストリートビューに、生前の父親の姿が残っていて思わず嬉しくなったという海外のニュースを読んだことがあって、ちょっといい話だなぁなんて思っていたら、にゃんと我が家のネコがある日のストリートビューに写っていてびっくり&すぐさま保存したことがありました。ストリートビューもじつは人々の暮らしの記録になっているという、いつか懐かしく「ああ、この日にここにいたんだなぁ」なんて思い返して眺めて泣いたりするんだろうな。

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