近所のスーパーでスイスチャードが激安で売られていて思わずカゴに入れてレジに向かったら、運悪く値札が貼られていなくて店員さんが野菜売り場の担当の人まで呼び出して調べてくれて出した値段が全然違う値段だったのですが、レジも混んでいてその場はそのまま支払ったものの、どうも納得いかなくて、野菜売り場に戻ってみたらスイスチャードが売り切れていて、隣にあったルバーブの値段をつけられていることに気づき、サービスカウンターに「これ値段違いますよね?」とクレーム入れたら「お客様が買ったのはルバーブです」と堂々と言われて(確かにちょっとだけ見た目が似てる)押し切られたことが忘れられません。
自分をしっかり持たないと、数の力で真実が歪められていく…怖い! と昨今のネット言論の怖さを痛感したり(飛躍がすごくてすいません)、あるいは、珍しいおしゃれ野菜を安さに目がくらんで手を出して、ちょっと気取ってみようとした庶民に対する報いがこれなのか…などといろいろ考えこんでしまいました。
全然関係のない小話で時間を奪ってしまい申し訳ありません。以下、ここ最近見た映画です。
「ガールフッド」(2014年) カリジャ・トゥーレ主演 セリーヌ・シアマ監督
「燃ゆる女の肖像」のセリーヌ・シアマ監督の初期の頃の作品で今頃見たんですけど、ほんと良かった。パリ郊外の団地に住むアフリカ系移民の少女を主人公に、大人になりきれない少女の成長と焦燥を描いた青春物語を、抑制の効いた静かな語りと映像で見せてくれます。ある日出会った年上の不良女子グループに誘われて、どんどん変わり始める主人公。家出して、万引きしたり、女番長(スケバン)のタイマン勝負(フランスにもあるんだ…とびっくりした)したり、差別や貧困にあえぐコミュニティの閉塞感から抜け出すために選んだ道は間違いだったかもしれないけど、一瞬でも確かに存在した女子たちの絆が美しく眩しかった! リアーナの「ダイアモンズ」をみんなで歌うシーン、忘れられないなぁ。
「女番長」(1973年)&「女番長ゲリラ」(1972年)杉本美樹、池玲子主演 鈴木則文監督
そういやちゃんとシリーズ通して見てないなぁと1作目から真面目にちゃんと見た「女番長(スケバン)」シリーズ。基本的に脱ぎっぷりのいいスケバンたちが、仁義にもとる暴力団に立ち向かう、どれも似たような話でどれがどれだっけ? とわからなくなるんですけど、個人的にサイコー! となったのがこの2作。「女番長ゲリラ」では名セリフ「スケバンのルールは守っても、シャバのルールはブチ壊す!」が飛び出すし、「女番長」は最初は対立していたスケバン同士も、最後に頼りにするのは男じゃなくて女同士の仁義(友情)という展開に胸熱。フェミニスト映画です。
「リズと青い鳥」(2018年) 山田尚子監督
泣いた。高校の吹奏楽部を舞台に、人付き合いが苦手で内向的なみぞれと、明るくて外交的な希美の対照的な二人の友情の行方を描いたアニメーション映画です。女の子のスカートや髪の揺れ、足元の弾むような動きで、10代の少女の儚さや繊細さを表現する山田監督のいつもの手法が今作でも冴え渡っていて、アニメってなんか台詞過多で説明しがちと思われそうだけど、この作品は違うんですよ! 絵の動きはすべて心の揺らぎ。個人的には遠い昔になるけど、思春期の面倒くさくてしんどくて、でもほんとは大事にしたいものが眩しくて、最後は心がギュ〜ッとなって、落涙。
「キラー・ビー」(2023年) ドミニク・フィッシュバック主演 ドナルド・グローヴァー監督
アマゾンプライムで配信しているドラマで、とあるミュージシャンを狂信的に崇拝している主人公がSNSでそのミュージシャンの悪口を書いている人を見つけては殺しに行くという恐ろしいストーリーで、現実に起きている、ちょっと過剰なファンダムシーンを描いたとされる社会派ホラーコメディって感じでした。SNS社会で暴走するファン心理を皮切りに、ビリー・アイリッシュ演じるコーチュラとかに行く金持ち白人のオーガニック信仰カルトとか、いろんな界隈を毒気たっぷりに描いていてムフフ(悪い笑)となります。そうはいっても何か虚飾のものにすがってしまう主人公の心の空っぽさがテーマにあって、最後だけはファンタジーとしての幸せなエンディングが用意されていて、題材の過激さに騙されそうになるけど、ほんとは優しい物語なんだなぁと最後まで見てちょっとホロリとなりました。
「ガールフレンド」(1978年) メラニー・メイロン主演 クローディア・ウェイル監督
NYでルームメイトとして一緒に暮らす写真家志望のスーザンと詩人を目指すアンのそれぞれの成長と友情の行方を描いた作品です。ルームメイトといっても早々にアンは結婚して部屋を出て子供もできて、スーザンは寂しさを抱えながらも一人で頑張って生きようとする、かつて仲が良かった二人もお互いの環境の差ですれ違ったり嫉妬したり、でもやっぱり友情はいつまでも消えないよ、みたいな優しいお話でとても良かったです。アパートメントのお部屋のインテリアも可愛いし、スーザンのファッションも素敵で、いつもそばに置いておきたくなるような可愛い作品。キャッチコピーの「everyone has one, wants one, or is one」は映画を見た後考えると、みんなそれぞれ何か持っていたり、欲しいと思ったりするけど、あなたがその何か、だったりするかもしれない、という、人はそのままで十分大事な存在なんだよ、という意味に捉えられて、さらにジ〜ンとなりました。
「ダンジョンズ&ドラゴンズ/アウトローたちの誇り」(2023年) クリス・パイン主演 ジョナサン・ゴールドスタイン、ジョン・フランシス・デイリー監督
最後は無理矢理、思春期にハマる異世界ものという意味で、テーブルトークファンタジーRPGの「ダンジョンズ&ドラゴンズ」の何度目かの映画化作品なんですけど、めちゃくちゃ楽しかった! 見てる間ずっとニッコニコです。ダンジョンズ&ドラゴンズの知識なくてもまったく問題なし。フルスイングの王道エンターテインメントで、よくあるファンタジーあるあるがギャグになって笑えるシーンもてんこ盛りで「え、もう終わり!?」とあっという間にエンドクレジット。気軽に楽しいもの見たい人におすすめしたいし、ファンタジー好きで見てない人いたら、絶対損するので今すぐ見てください。思いがけずヒュー・グラントが出ていて嬉しかった(最高のうさんくさい笑顔が爆発)。