
大昔のアート本には興味深い歴史が詰まってました
大昔のアートや文学資料など歴史的価値のある作品を大量にアーカイブしているThe Public Domain Reviewを久しぶりに覗いてみたら、むふ〜!となる資料がやっぱりたくさんあって夢中になって見てしまいました。まず目を引いたのは1820年〜1914年頃の本の装丁をまとめたもの。






今こうした装丁の本を見たら「豪華本じゃん!」と大騒ぎしそうですが、説明文によればちょうど19世紀にこれまで刺繍などが施されたハンドメイドの1点ものに近い装丁本から、工業化が進んで大量生産の時代に入り、これまでの革から布製に、刺繍からエンボス加工やリトグラフに変化していったと書かれていて、こういう本が市場にわんさか出回っていたのかぁとうらやましい限り。




次は1828年〜1840年頃、Orra White Hitchcockという女性が書いた自然科学のイラストレーション。アメリカ、マサチューセッツ州にあるDeerfield Academyの教授であった夫とともに、住んでいる地域の植物や地層を調べてこのようなイラストにして授業で使っていたのだそう。アートとしての完成度! 無味乾燥な(すいません)教科書の説明図よりずっと頭に入ってくる気がします。彼女自身はアートと科学と信仰は、holy trinity(三位一体)であるとの考えを持っていたそうで、信仰心も篤く、Congregationalist Church(会衆派教会)に属し「gap creationism(断絶説)」を信じていた、とか説明文に書いてあって、初めて聞く「断絶説」をなんじゃらほいとネットで調べて説明読んでも「なるほど、よくわからん!」と脳が思考停止しました。すみません。






こちらは1902年明治に出版された着物の図案集(本田雲錦堂)。友禅染の着物の柄で、京友禅の初代、上野清江のデザインのようです。ページの構成がなかなかに斬新でデザインとしてとんがってる気がする、着物の本というよりアート本では、と思うくらいなのですが、どうやら出版元の本田雲錦堂(うんきんどう)と当時ライバル関係にあった芸艸堂(うんそうどう)は兄弟が別々に運営していて、どちらがいかに豪華な本を出せるか、最先端の印刷技術を採用できるか、兄弟の張り合いをやっていたとかいう歴史が書かれてましてビックリ。ちなみに後ほど兄弟仲直りして会社も合併、今でも存在する日本で唯一の木版印刷の出版社、芸艸堂となったそうです。本に歴史あり。


最後は謎すぎるカエルと戯れる(?)妖精の絵。「Wear Celluloid Collars and Cuffs(セルロイドの襟と袖を付けましょう)」と書かれていて、水を弾く繊維でできたこの襟と袖を宣伝するための1870年頃のアメリカの広告なんだそうです。南北戦争以降、鉄道網の発達など流通の手段が飛躍的に広がったことにより、一大広告ブームがやってきたとかで、いかに目を引く広告を作るかが大事だったため、こんな変な(すいません)デザインも生まれたんじゃないでしょうか。カード型のものからポストカードやミニポスターの形が流行したそうです。

