
最近なんだかんだで映画をじっくりみる時間がなくて、あんまり見れていないんですが、そんななかでも今年の後半見て良かった〜と思った作品をいくつか。年末年始のゴロゴロにも飽きて暇だなぁとなったときのご参考になれば幸いです。

「アンナ(ディレクターズカット版)」(2022年)
いきなり映画じゃなくてドラマですいませんですが、amazonで配信中の韓国ドラマ。主人公のユミは美人で成績優秀だけれど、さまざまな苦難に直面し挫折を味わう。彼女がどん底の人生から這い上がるためにとった手段は、他人のアイデンティティを奪いウソで固めた人生を歩むことだった…。最初はささいなウソから始まってどんどん後戻りできない深みにハマっていくドキドキハラハラの物語が単純に面白かったのと、日本とそう変わりのない学歴や出自を偏重する社会の歪みや、ステレオタイプな女性像みたいなものにも切り込んでいて、主人公を単純に犯罪者とだけ断罪するような見方にはなっていなくて、とてものめり込んで見れる作品でした。なぜかこのドラマ、2バージョン存在していて、ディレクターズカット版のほうオススメです。

「17歳の瞳に映る世界」(2020年)シドニー・フラニガン、タリア・ライダー主演 エリザ・ヒットマン監督
望まぬ妊娠をした高校生の少女が妊娠中絶手術を受けるため遠く離れたニューヨークまで親友と共に旅する物語。評判は聞いていたのですがなかなかテーマがテーマだけに腰が重かったけれど思い切って見てみたら、ズシ〜ンと重いものが心に残る素晴らしい作品でした。ドキュメンタリー映画か!? くらいに起きる現実を淡々と、主人公と一緒に経験しているかのようなリアルさで描きます。「勇敢な旅路」とコピーにあるけど、そんな力強いものではなくて、今にも壊れてしまいそうなティーンネイジャーの脆さと、それを決して大人に見せないように必死な主人公たちに、こっちの心が張り裂けそうでしたわ!



「サウンド・オブ・007」(2022年)マット・ホワイトクロス監督
「女王陛下の007」(1969年) ジョージ・レーゼンビー主演 ピーター・ハント監督
007シリーズの音楽に注目したドキュメンタリー「サウンド・オブ・007」。超有名なボンドのテーマ曲誕生の裏話や各シリーズの主題歌や音楽がどのように作られ映画の中で使われてきたかをたっぷり関係者のインタビューと映画の映像を通して描いていて、007シリーズ全部見たことないけど、音楽には興味あるかも程度の私でも楽しめた! 当たり前だけど、映画で音楽が流れるときにはちゃんと意味があって、それをいちいち全部丁寧に「このシーンでこの曲が流れるのはね」と教えてくれるので、なぬ〜!と新たな気持ちで映画を見直すことができるので、この作品見た後に無性に「カジノ・ロワイヤル(2006年)」と「女王陛下の007」が気になってほんとに見たぐらい。
で、「女王陛下の007」初めて見たんですが、失礼ながら面白くてビックリ。007役が誰これ?なんか地味でパッとしないなぁ〜なんて最初思ってた自分が恥ずかしい。荒唐無稽なスパイアクションの派手派手しさとか、笑っちゃうような悪の組織描写が最高なのと、意外や意外とボンドでちゃんと純愛ストーリーが描かれていて最後しんみりさせてきたり、今まで「ロシアより愛をこめて」が個人的ナンバーワン(ボンド作品全作見てないけど)だったのですが、超えてきました。
年末なんで余談として偶然手に入れた情報なんですけど、にゃんとこの007が宝塚でミュージカル!になるそうで、その名も「カジノ・ロワイヤル〜我が名はボンド」。宝塚のポテンシャルすごい。来年公演だそうです。

「Wの悲劇」(1984年) 薬師丸ひろ子主演 澤井信一郎監督
なんか見ちゃったんですよ、「Wの悲劇」。大昔に一度見たきり忘れていたこの映画、見直したら吹き出すくらい面白かったです。女優の卵が本当の女優になるまでを描いたこの作品、「顔はぶたないで!私女優なのよ!」の名セリフほか、三田佳子のベテラン女優っぷりが恐ろしいほど完璧だわ(頭のなかで何度も真似してます)、ありとあらゆるテンプレ演出&セリフだけで出来上がっていて、「まさか…!?」とこちらが危惧する展開をことごとく外さない完璧な作品。女優系映画(?)の金字塔です。みんなで見るとさらに盛り上がると思うのでウォッチパーティ向き。

「危ないことなら銭になる」(1962年)宍戸錠、浅丘ルリ子主演 中平康監督
偽札作りで一儲けしようとヤクザ者たちが騒動を繰り広げるアクションコメディで、次から次へと展開も早いし、マンガみたいなキャラだらけでわちゃわちゃしてるだけで楽しいし、一気に見られる娯楽作。なんつっても浅丘ルリ子が柔道と合気道の達人という設定で、女だからと男にバカにされれば「えいや〜!」と投げ飛ばす痛快キャラなのが素晴らしかった! 宍戸錠を食うぐらいのチャーミングさを放っていて、ほんと見ていて気持ちよかった。

「プレステージ」(1976年) アラン・ドロン、ミレーユ・ダルク主演 エドゥアール・モリナロ監督
いったいこの映画は何なの〜!? と疑問まで浮かぶ珍作「プレステージ」は、アラン・ドロン扮する美術商の男がオークションの競りのスリルがたまらないと妻も放ったらかして仕事に突き進む様を描いてるんですが、アラン・ドロンの仕事ぶりが熱心を通り越して常人の域を超えたサイコ、いやコメディになってて、ラストの展開には、ほんとに口ぽか〜んです! マジで!! と久しぶりに映画に対して声を出してしまったぐらい。すごい変な映画見たい方はどうぞ。あと、ミレーユ・ダルクが時々研ナオコさんに見えます。

「おやすみオポチュニティ」(2022年)
ドキュメンタリーといえばnetflixという感じだったのに、今年はamazonのドキュメンタリーにいいものが多かったように思います。その究極がこの火星探査用の双子のローバー(探査車)、スピリットとオポチュニティを扱った「おやすみオポチュニティ」。2004年NASAの火星探査プロジェクトとして2台のローバーが送り出され、当初は90日間の予定だった稼働時間がなんと結局15年間も動き続け火星から数々の貴重なデータを送り届けた探査機とNASAの人々の絆の物語。もう今すぐ見て〜! と言いたいぐらい、猛烈に感動しました。
生命の兆しを求めて荒漠とした赤い火星でただ2人黙々と働くローバーと、地球で今にもローバーが動きを止めるのではないかと心配しながらデータを毎日心待ちにするNASAの人々との15年間に壮大なロマンが詰まっていて、最後は私もNASAの人と一緒に号泣! 何気なく見始めたんだけど、まさか映画「WALL・E ウォーリー」とか「オデッセイ」を彷彿とさせるようなエモーショナルな物語が展開されるとは思ってもみなくて、たとえ宇宙やサイエンスに興味がない人でも、心揺さぶられる瞬間がたぶんあるんじゃないかなぁと。今も火星にスピリットとオポチュニティが眠っていると考えると、そして今また新たな後継機が火星に送られていること、そんなことを考えて宇宙(そら)を見上げて涙ぐんじゃうくらい、今年ベスト級に良かったドキュメンタリー作品でした。