
ふわりと染み入る恋愛映画
最近見た恋愛映画2本がとても良かったのでと、無理やりまとめようと考えた枕詞が「人肌恋しいこの季節」という気持ち悪いものが真っ先に浮かんで絶望しました。ちなみにですが、英語で人肌恋しい季節というは、cuffing seasonといって真剣な交際相手を探す季節という意味合いで、やはり寒い季節を指すので面白いなぁと思いました。

「ビール・ストリートの恋人たち」(2019年) キキ・レイン、ステファン・ジェームス主演 バリー・ ジェンキンス監督
また話題作を今頃見たんかい、なやつですが、素晴らしかった。運命の悲劇に翻弄されながらも、お互いを信じて支え合う男女の物語。過酷な現実を、幻想的な映像美で(どのシーンも美しすぎて止めて凝視したくなるほど)描き出していき、まるで映像で語る詩のようで、舞台となった70年代NYの街角のひとつの人生の物語が心に入り込んできて離れていかなくなるような、見終わった後のふわっと温かさに包まれるような感覚は、最高のエンディング。1万点!

「1978年、冬。」(2008年) チャン・トンファン、シェン・チアニー、リー・チエ主演 リー・チーシアン監督
中国の地方都市、西幹道で暮らす兄弟の家の向かいに、北京から少女が引っ越してきて恋心が芽生えていく。文化大革命後の中国の寒村で、決して豊かとはいえない生活と自由のない制限された暮らしのなかで、若者たちが自分の人生を生きようともがいた物語で、泣けた…。ものすごく抑制された演出で目も心も心底冷え切るような寒々しい映像のなかに、ほんのちょっとの人の優しさとか想いが描かれ、こういうやつに弱い私はもう心と涙腺が大崩壊。最初はめちゃくちゃ嫌な奴と思っていた兄のスーピンは不良息子といわれ、仕事もさぼるしやりたい放題なんだけど、一党独裁の政治体制の下、自分で何も選ぶことのできない敷かれたレールを生きるしかなく、その人生の行方のことを考えたら、彼の行動のすべては1978年の冬を精一杯好きに生きることだったんだなぁと後から思ってまた涙腺崩壊です。

