
エンタメの世界で子供と動物が出てると採点が甘くなるというか、無条件に心が動かされやすいっていう法則あると思うのですが、だからこそ非情に冷徹に判断すべし!と鉄の心でいつも見ようと心がけているのですが(なんのために?という正論はさておき)、そんな心で見ても100点満点の子供映画を最近見ました。

「トゥループ・ゼロ〜夜空に恋したガールスカウト〜」(2019年)ヴィオラ・デイヴィス主演
amazonプライムのオリジナル映画。母親を亡くしてしまった少女が今は宇宙のどこかに母親がいると信じて毎晩宇宙に向かって話しかけていた。そんなときにNASAのボイジャー探査機が地球外生命体と交信するためのレコード(ゴールデンレコード)に声を吹き込む子供を探してガールスカウトの大会を開催することを知り、即席のチームを結成して大会に挑む。
学校のはみ出し者ばかりで結成されたポンコツグループと、やはりはみ出してしまった大人のひと夏の成長ストーリーと簡単にいえばそうなるんですが、いわゆる名作「がんばれベアーズ」系の物語が好きな人ならすぐ見たほうがいいです。どんな落ちこぼれでも何かになることができるんだ、というメッセージ、鉄の心が瞬時に溶けました。
登場人物全員のことが好きになる、というのはいい映画の証拠(個人的感想)ですが、それがまさにこの映画。一人一人の物語に没入してしまう、ずっと彼らのことを見ていたいと思わされる魔法がありました。映画のラスト、主人公の少女が母親の死を乗り越える象徴的なシーンに号泣。デヴィッド・ボウイの「スペース・オディティ」の使われかたも、これまで見たなかでいちばん良かった。

「ファング一家の奇想天外な秘密」(2015年)ニコール・キッドマン主演 ジェイソン・ ベイトマン監督
日本ではDVDスルーされた映画でamazonプライムで配信されてます。なんとも変わった味わいの映画で、ハプニングと呼ばれるようなパフォーマンスアーティストの両親に育てられた姉弟の、まさに邦題のとおり奇想天外な運命を描いた作品です。
親のアート活動に強制的に参加させられ翻弄され続けてきた姉弟が、突如として失踪した両親の行方を追って予想外の事実を知ることになる…というミステリーでもありコメディでもある家族の物語。いちばん厄介な絆、家族というものに振り回されてしまう人々の悲哀を描いていて、それなりに楽しめました。
道徳感とか倫理観とか高い人は「なんじゃこいつらは!」と憤慨するかもしれない人が(特に両親)描かれているので、不快感しかないという感想があってもおかしくない。でも、肉親だからといって無条件に尊敬したり愛情を持ってしかるべし、という固定観念に抗い、時に存在するトンデモ親に対する愛憎と決別によって呪縛を解くお話と見ると、なかなか面白いのではないでしょうか。
ところで監督兼主演のジェイソン・ベイトマンのnetflixドラマ「オザークへようこそ」見たんですが、シーズン3がスゴすぎていまだに気持ちの整理がつきません。絶句したシーズン。

「ジンジャーの朝~さよなら、わたしが愛した世界」(2012年)エル・ファニング主演 サリー・ポッター監督
トンデモ親で思い出した映画。そしてさっきは不快感あっても最終的に乗り越える話だし全部オッケー!とか言いましたが、この映画に登場するインテリ父親の不快感は私のこれまで見た映画のなかでもナンバー1級に不快で全然オッケーになりません。映画の登場人物にこれほどまでに嫌悪感を覚えたことはないかもしれない。こうやって書いているうちにも思い出してきてムカムカしてくるレベル。
自分だけが正しくて他人を基本的に見下していて、確かに教養は高いけれど他人の気持ちは全く無視して自分のやりたいようにやって悪いのはすべて他人、そしておそらく女性にしかマウントがとれないタイプの男、それがこの映画の主人公の親。
サリー・ポッター監督なんで雰囲気はいいし、エル・ファニングも可愛いんだけど、もう見てるのが苦痛になるくらいの作品で、どこかで読んだコメントで「これ虐待」と書かれていて確かに精神的なハラスメントが延々行われていて辛い辛すぎる! なのでおススメしません。しかも私うっかり2回も見てしまって(嫌いすぎて一回記憶から消してしまったのかもしれない)、個人的にも傷が深い映画。