レコードショップ栄枯盛衰物語

The-Diskery 店内

amazonプライムの配信タイトルで気になって見たドキュメンタリー映画「Last Shop Standing」。なんと日本語対応しておらず必死に聞き取ってなんとか見たのですが、少なからず音楽やレコードに思い入れのある人なら楽しめる作品となっておりました。

映画「last shop standing」ジャケット
「last shop standing」著者
ジョニー・マー

イギリスを舞台に、インディペンデント(独立系)レコードショップの始まり、繁栄、没落、復興の歴史を、レコード店オーナーや数々のミュージシャン(ジョニー・マー、ファットボーイ・スリム、ポール・ウェラー、ビリー・ブラッグetc)のインタビューで構成した作品。2009年に出版されたGraham Jonesさんの同名著作を基にしていて、とてもわかりやすくレコード店と音楽業界の結びつきを教えてくれます。

レコード店の始まりは1950年代のエルヴィス・プレスリーの登場からビートルズの時代に入り栄華を極めるも、80年代にCDが登場し、さらに巨大チェーン店やスーパーマーケットまでCDを売り始め徐々にレコードの需要が落ちていき、ダウンロード時代に突入して、一時期は全英で2000店もあったレコード店が今は200店舗ほどにまで激減してしまったとか。しかし古き良き時代をただ懐かしむのではなく、レコードに興味を持ち始めた新しい世代の登場が空前のレコードブームを今生んでいて、新しい形のレコードショップも現れ、レコードはまだまだ死なね~ぞ!という希望に満ちた終わり方でした。

老体に鞭打って経営している老舗レコード店のオーナーたちが(白髪老人オーナーのすぐそばにミスフィッツとかNEU!のロゴとか見えて最高だけど)、もう昔のようにはレコードは売れない…と嘆きがちのなか、新世代のレコード店は「みんなレコードはもう終わりだとか言ってるけどそんなことない! 今はいろんなやり方があって店内ライブやインスタやツイッターで発信もしてる。みてくれよ、この人だかりを!」とか言ってて世代間格差を感じたり、ジョニー・マーは「みんなレコードを買わなくなったというけれど、もしかしたら逆なんじゃないか。レコードを買える店がなくなっているから買わないんだと」とか、上手いこと言っているのかどうかやや疑問の残るセリフを吐いてました。

それはともかく、私の好きな単語であるインディペンデント(独立)系の店の魅力がレコードショップには詰まっていて、その気骨さに拍手を送りたくなる数々の店を見ることができて最高の映画でした。

この映画内でも大きくフィーチャーされた全世界規模でのレコード店の祭り「Record Store Day」は今年はコロナの影響で8月9月10月開催だそうです。日本にも数多く存在するインディペンデント魂を持つショップを支えるためにもぜひ。

以下、映画に出てきたレコード店をいくつか。

ブライトンにあるレコード店「Resident」のレコードショップデイの様子。大賑わい。そしてイギリス人らしくみんな服が黒。

1952年にオープンしたバーミンガムの老舗店「The Diskery」。これぞレコード店という雑然とした店内が最高。店はぜんぜん変わってないけど昨今のレコードリバイバルで若者や老人まであらゆる世代のお客さんが来てビックリしてるらしいです。

マンチェスターにあるファンクソウル系の「Beatin’ Rhythm」。映画内でいろんな人がレコード店の良さとしてコミュニケーションを挙げていて、店でのいろんな会話(最近良かったレコードある?、とか)が宝なんだと力説しておりました。でこの店は特にスタッフがフレンドリーだそうです。レコード店の雰囲気は好きだけど、会話とか怖くて出来ない、盗み聞きでいいです派の私みたいな意見もあります、ちなみに。

Honest Jon’s Records カウンター

ロンドンにあるジャズやレゲエ、ソウル系のレコードを扱う「Honest Jon’s Records」。blurのデーモンとHonest Jon’s labelというレーベルを立ち上げて幅広いジャンルの復刻盤を出しているそうです。

Monorail Musicカウンター写真
image via glasgow live

なんとも和やかな集合写真が撮られたのはグラスゴーにある「Monorail Music」。2018年のレコードストアデイにオープンしたレコード店で、そのオープン記念に駆け付けたのがpulpのジャーヴィス(写真右端。一人だけ存在が浮きすぎてて間違えようがない)。その後ろにはパステルズのスティーブン・パステル。

rough trade west店内
image via rough trade
rough trade east店内
image via time out

やはり外せないロンドンの「Rough Trade」。今や5店舗も抱えているようですが、今はもうないニールズヤードにあった店舗に初めて行ったとき、緊張しすぎで心臓バクバクで何を買ったかすら覚えていないくらい個人的な憧れのレコードショップ。

とはいえ、映画の撮影後(2012年)に閉店してしまったレコード店もあったり(ノーマン・クックが働いていたブライトンのRounder Records含む)、希望感だけではインディペンデントの茨の道は険しい現実…。

今はなんでもデジタルで人の手の温かみがない!とか典型的な老害発言するつもりないし、デジタル便利だしいろんな垣根を取り払う最高の手段だと思っていますが、音楽と聴く人をつなぐ場所としてのレコード店には確かに何か特別なものがあると思うし、インディペンデント精神の象徴として残るべき場所だと思っているので、レコード店よ永遠に。

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