冬だから、というわけではないんですが、目にも心にも寒々しい気持ちを残してしまう映画見てしまいました。いちおう覚悟して見たものの、思いのほかずっしりきちゃいました。しばらく心にずど~んと残る。そんな映画2作品。
ラース・フォン・トリアー監督 「メランコリア」(2011年)
今頃見たんかい!といわれそうですが、なかなか見ることに覚悟を要求される ラース・フォン・トリアー監督の鬱三部作のひとつといわれたら後回しにするでしょ、と言い訳しておいて、今見ました。嫌~な気持ちになるかも…と恐る恐る見たのに、驚愕の映像体験を全身に浴びせるすごい作品でした。精神を病んでいる主人公が結婚パーティで理解を超えた行動を次々起こしたり、感情移入しようがない、どうしちゃったんですか?という人物の奇行オンパレードなんだけど、次第に正常だと思われている人間が正常でない状況で壊れていき、正常でなかった人が世界の終末に正気を取り戻してるかのような、常識がぶっ壊れた世界感とポスターにも書いてある圧倒的で美しすぎる映像美が、こちらの理性を吹き飛ばす勢いで迫ってきて、ラストの世界の終わりのシーンは、ちょっとしばらく忘れることのできない圧巻さでスゴかった。なにか言葉で説明できない飲み込まれてしまうような映像体験。映画館で観るべきだった(反省)。
あと、 キルステン・ダンストが可愛かったのと、「オフィーリア」の絵のオマージュを始め、映画全体のイメージが絵画のように細部まで美しく素敵だったのもよかった。
アマンダ・シェーネル監督「サーミの血」(2016年)
北欧の少数先住民族であるサーミ族の物語。サーミ族、この映画で初めて知ったけど、トナカイと共に遊牧しながら極寒地で暮らしている民族だそうで、映画の舞台となるスウェーデンで驚くような差別的な待遇を受けていて、その境遇から抜け出そうと必死に生きる少女エレが主人公。サーミ人として受ける差別が嫌で家族を捨て、スウェーデン人のなかに入り込もうとしてもまた差別に会い、どの社会からもはみ出してしまう。私なんかから見たらスウェーデン人もサーミ人も区別がつかないのに、血という目に見えないものに縛られ逃げられない社会の辛さが、寒い北欧の景色と相まって痛いくらい染み込んできます。
サーミ族の民族衣装と長い髪を編み込みお下げにしているのが、とっても可愛いので、話は寒々としてますが、目には肥やし。